8/5/2022 streaming & download
https://virginmusic.lnk.to/yoinoumi
words: miu, Huge M
music: miu, Huge M
arrange, mix and master Huge M at studioHUGE
https://www.youtube.com/c/Huge-mTokyo/
https://twitter.com/hugemBP
artwork by 眩しい(MABUSHI)
https://www.mabushiii.com/
https://twitter.com/mabushi__
連れ去って 宵の海へ
ここはまだ 蒼の調べ
miuの配信第10弾となる新曲「宵の海」は、こんな印象的なフレーズから始まる。短いセンテンスだけで夏の終わりを予感させる切ないラブソングは、まさにmiuの真骨頂といってもいい一曲だろう。まだまだ暑い夏、エンドレスサマーだなんて思っていても、8月に入ると急に夏の終わりを感じる瞬間がある。夜中に窓を開けた瞬間の風の湿度や、激しく降った夕立の後の雨の匂いなど、それは突如訪れる感覚だ。「宵の海」でははっきりと説明しているわけではないが、夏が終焉に向かっていることを“肌感覚”で聴き手に伝えてくれるのだ。
彼女によると、「宵の海」には大きく2つのテーマがあるという。ひとつは、宵の時間が思い出させる記憶。「だんだんと暗くなると、帰りが遅いと親に怒られるのが怖かったのか、夜に出遭うとされている何かに怯えていたのか。夕飯の匂いにワクワクする反面、ざわつく感覚がありました」というコメントには誰しも共感できるだろう。昼から夕方、そして夜へと切り替わっていくグラデーションの時間は、古来より「逢魔時(おうまがとき)」といわれていただけあって、どこかそわそわとさせられた経験があるだろう。その感覚は「宵の海」にも見事に表現されている。
もうひとつの「宵の海」のテーマは、すべてのものが還る場所である海の存在感。「海から生命は生まれ、やがて還っていく。生きているものだけではなく、音や光、生きているとされていない者たちも」と感じた彼女は、夏の海に対する感覚を、ノスタルジックかつファンタジックな言葉に落とし込んでいる。一編の小さな童話を読んだような後味は、「宵の海」の魅力といっていいだろう。さりげなく聴こえてくる波の音や、夏祭りや童謡をイメージさせるフレーズ、まるでたゆたう波間で揺られているかのようなヴォーカルとコーラスの掛け合い。これらが絶妙に混じり合い、確固たるmiuワールドを構築しているのだ。
miuは2000年生まれ、北海道旭川市出身の若きシンガーソングライター。上京して地道にライヴ活動を行っていたが、楽曲をサブスクリプションで配信し始めたのは昨年9月からなのでまだ1年に満たない。それでも「dive」や「smoke」といった楽曲の再生数は着実に増えており、一昨年4月に開設したYouTubeチャンネルも5万人近くまで登録者数が伸びている。現時点では、「dive」が173万回、「smoke」が114万回と、派手なプロモーションをしているわけではないが、リリックビデオの再生数も着実に増加している。しかも海外からのアクセスが多いのも特徴だ。たしかに、日本語で歌っているとはいえ、この独特の浮遊感の魅力はグローバルに受け入れられて当然といっていいのかもしれない。
「宵の海」に向けてmiuは「夏の夜を少し涼しくする心温かい一曲になりました」とコメントしている。夏の終わりが近づくのをひしひしと感じながらも、まだ寝苦しい夜が続く8月。「宵の海」は、そんな移ろう季節をそっと彩ってくれるに違いない。